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J-RHYTHM試験の背景
心房細動は加齢とともに罹患率が増大し,その症候,運動耐用能の低下,血栓塞栓症の合併にとどまらず生命予後の低下をもたらすことが示されており1~3),社会の高齢化にあって大きな社会問題となっている4,5).
心房細動治療の背景には,洞調律を維持することにより自覚症状が改善され,運動耐用能が改善され,脳梗塞発症リスクが軽減され,抗凝固療法を中止でき,最終的には予後の改善がもたらせるという前提のもと,日常診療において抗不整脈薬の投与が行われている.しかし,2000年以後欧米から相次いで発表された大規模試験(PIAF6),AFFIRM7),RACE8),STAF9))の結果,これらの前提が全て否定され,たとえ洞調律が維持されたとしてもハイリスク例には抗凝固療法を終生継続することが必要で,また心拍数コントロール治療によっても十分なQOL改善が得られ,抗不整脈薬の副作用などを考慮するとむしろ心拍数コントロールは安全な治療法であることが強調された.確かに,抗不整脈薬による洞調律維持には無視し得ない重篤な副作用の発現があること,長期的展望に立つと洞調律維持には限界があり,多くの症例で持続化,慢性化が認められることがあり10),むしろ慢性化した症例での心拍数コントロールと抗凝固療法のみで満足な治療成績が得られる症例も多く経験する.しかしながら,発作性心房細動例で発作が再発する度に激しい不快な自覚症状で苦しむ症例には心拍数コントロールがほとんど無力なことは多くの臨床医の実感である.実際,PIAF,AFFIRM,RACE,STAFではほとんど発作性心房細動例は検討されておらず,強いて言えばAFFIRMの30%の例が発作性であったが,これらの症例も持続性心房細動例と併わせて解析されてしまっていた.
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