巻頭言
呼吸器内科医,循環器内科医は何処へ行った?
伊藤 宏
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1秋田大学医学部内科学講座循環器内科学分野・呼吸器内科学分野
pp.117
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100979
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全国の地方で医師不足が叫ばれているが,秋田県における医師不足も非常に深刻である.秋田市内は比較的状況は良いものの,ひとたび周辺地域に目を移せば,それは惨憺たる状況である.県内では病棟閉鎖や救急指定の返上を余儀なくされる病院が相次いでいる.医師不足の問題は秋田県ばかりでなく,東北地方全体で非常に深刻である.2008年度より医師不足が顕著な全国10県の医学部定員を10名ずつ増員することが認められたが,医師不足対策のため定員を増やした10県のうち,その半数が東北地方の県であることからも,東北地方の医師不足が際立っていることがうかがわれる.
秋田県をはじめとする東北地方の医師不足の特徴は,全国的に問題になっている産婦人科医,小児科医などの不足ばかりでなく,本来,最もニーズが多いと考えられる内科医さえも絶対的に不足している点にある.5名いた内科医すべてが開業などのため短期間のうちに退職したことにより,内科診療中止の危機に瀕した200床クラスの某市立病院の例など,都会では考えられないような例が後を絶たない.医師不足→過重労働→医師の退職→医師不足,という悪循環が繰り返されているのである.このように辞めていく医師のなかには呼吸器内科医,循環器内科医も多く含まれているのであるから,問題は他人事ではない.
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