巻頭言
呼吸器内科医を育てること
高橋 弘毅
1
1札幌医科大学医学部内科学第三講座
pp.1073
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100902
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高齢社会を迎えた我が国,平均寿命が女性は22年連続世界1,男性も4位から2位に浮上したことが7月の厚生労働省報告で明らかとなった.同省がまとめた簡易生命表によると,がん,心臓病,脳血管疾患の3大疾患で死亡する確率は男性が56.00%,女性は53.57%.3大疾患が克服されれば,男性の平均寿命は8.31歳,女性は7.20歳延びる見込みという.また,肺炎は4位にランクされている.本誌読者の多くは1~4位の疾患に関わる仕事をしておられるはずである.今後,われわれ呼吸・循環器系専門医の出番が続きそうである.この統計,初期臨床研修医に呼吸/循環系への進路を勧める資料になるとも思うのだが,最近は「忙しい分野はちょっと勘弁……」と面と向かって言うような「モチベーション」も「マナー」も欠いた学生や研修医も現れ,逆にマイナス効果も懸念される.
それにしても,需要(患者数)と供給(医療者数)のアンバランス,都市部と地方の地域格差が深刻化し,その勢いに歯止めがかからない.北海道では空路を使っての病院出張も珍しくない.半径100kmを守備範囲とする地域の呼吸器科もある.肺がん撲滅に向けて巡回検診車での胸部CT健診を始めたいのに,チェック後の精密検査を任せられる呼吸器内科医の不在地域が多いとも耳にした.マスコミ等から「医師引き上げ」と批判を受けるが,引き上げたのではなく,勤務医が自らの希望で別の職場へ異動したに過ぎない.呼吸器内科にとって,逆風の時代を迎えた.
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