Japanese
English
特集 呼吸困難からみた呼吸器・循環器疾患
呼吸困難感と脳内メカニズム
Dyspnea and Brain
本間 生夫
1
Ikuo Honma
1
1昭和大学医学部第二生理学
1Second Department of Physiology, Showa University School of Medicine
pp.9-16
発行日 2008年1月15日
Published Date 2008/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100953
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
はじめに
呼吸困難感は慢性呼吸器疾患や心臓疾患での最も苦痛な症状である.疾患ばかりでなく,正常な人でも,激しい運動や作業をしていると呼吸困難感を訴える.呼吸困難感は呼吸運動に伴い生じる呼吸の不快な感覚である. 息苦しさ,息切れなど多くの呼び方があるが,実際,疾患によって感覚の質が違うようである.慢性閉塞性肺疾患では呼吸運動の努力感,空気不足感と表現する患者が多く,気管支喘息患者では呼吸の努力感とともに胸が締め付けられるような感覚を訴える.感覚の表現はあくまで主観的であり,感覚ルートの違いから客観的に示しているものはない.老年になるほど呼吸困難感を訴えることが多くなるが,それは生理的に肺機能が低下することに起因し,残気量の増大や肺,胸壁の硬さ,呼吸筋力の衰え,さらにそこからくる努力性呼吸の増大が関与している.したがって,老化現象と呼吸困難感を対比していくこともメカニズムを探るのに必要なことである.65歳以上の人の30%以上が日々の生活で息苦しさを訴えるという1).
ヒトの脳機能局在を非侵襲的に調べる方法が,今世紀に入りいくつか使われるようになり,ヒトの脳機能の解明が進められている.感覚としての呼吸困難感もそれらの研究の対象となり,徐々に呼吸困難感の中枢内メカニズムが明らかになりつつある.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.