書評
―川名正敏,北風政史,小室一成,室原豊明,山崎 力,山下武志 編―カラー版 循環器病学 基礎と臨床
山口 徹
1
1国家公務員共済組合連合会虎の門病院
pp.1286
発行日 2010年12月15日
Published Date 2010/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101602
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わが国の死因の双璧は癌と脳・心・血管を含めた循環器疾患である.高齢化や生活習慣の欧米化を考えると更に増加する可能性が高い.国の医療計画として取り上げられた主要な4疾病でも,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病が取り上げられている.その循環器疾患も,脳卒中は減り虚血性心疾患が増加して,一昔前とは大きく様変わりしつつある.幸い虚血性心疾患による死亡は増加せず,近年の治療法などの進歩が大きく貢献していると考えられる.
循環器病学の進歩も,病態の理解に始まり,診断,治療,予防と多岐に渡る.特に治療分野の進歩はめざましく,冠動脈・末梢動脈・大動脈疾患や不整脈に対するカテーテル治療,ペースメーカー,除細動器,補助人工心臓などの治療デバイス,動脈硬化や高血圧,心不全に対するスタチン,ベータ遮断薬,RAA系抑制薬などの薬物治療など,循環器疾患の予後が確実に改善されていることが実感できる.またそれを支える画像診断の進歩も著しく,心エコー図,RI,MRI,MDCT,IVUS,血管内視鏡など,新しい非侵襲的あるいは侵襲的な診断法が早期診断や病態の理解に大きく貢献した.循環器疾患の診療や研究に携わる人は多く,循環器病学の各分野で著書が溢れ,またその早い進歩に対して最新シリーズ的なものは多かったが,これらを総合的にまとめた決定的なテキストはなかった.
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