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日本における人口の高齢化はとどまるところを知らない.現在,65歳以上の高齢者の占める割合は約20%であり,2015年には25%と4人に1人が高齢者になると予測されている.肺はヒトの臓器において唯一外界に開放された臓器で,加齢に伴い様々な環境因子の影響を受けることから今後本邦においてもCOPDや肺がん,呼吸器感染症などの呼吸器疾患が増加すると考えられている.実際,2001年に行われたCOPDの疫学調査(NICE study)においても,40歳以上の人口の約8.5%がCOPDと報告されている.一方,悪性腫瘍(がん)においても高齢化に伴い肺がんの罹患率が増加しており,2015年には肺がんは男性において胃がんを抜き第1位になると推測されている.がんによる死亡率も肺がんが1996年以降第1位である.これらの事実は社会において呼吸器内科医のニーズが極めて高いことを意味する.しかしながら,呼吸器内科医の数は社会のニーズを満たすほど十分でない.実際,呼吸器専門医数は消化器専門医数の四分の一以下であり,循環器専門医数の三分の一である.今後はどうだろうか?最近の若手医師の「呼吸器内科は重症が多い,治らない,患者さんが苦しみながら亡くなる,忙しい,医師のQOLが低い(本当に低いかは明らかでないが)ので専門とするには考えてしまう」という声から推測すると今後も呼吸器内科医が急増する可能性は低いかもしれない.これは大きな問題である.
呼吸器内科を既に専門にしている我々はこれらの事実を真摯に受け止め反省すべきところは反省する必要がある.我々は呼吸器病学の面白さを十分に彼らに伝えるような教育をしてきたのだろうか?世の中の多くの患者さんは呼吸器疾患で苦しみ何とかしてほしいと願っている.今後は,この現実を希望に溢れ医学の道に進んだ若手医師に伝え,いかにこの呼吸器内科がやりがいのある仕事であるかを伝える努力を継続していくことが我々に課せられた責務であろう.また同時に,研究の面白さ,大切さを繰り返し強調することが肝要である.研究をすることで臨床を経験学でなく問題意識を持ち科学的に捉えられるようになる.臨床の質を高めるためには研究が必須であることは欧米の医学教育の歴史からも明らかである.
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