特集 カリキュラム改正に伴う保健婦の基礎教育
保健婦教育に求められているもの
矢内 純吉
1
1大阪府立看護大学
pp.517-523
発行日 1996年7月10日
Published Date 1996/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901380
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先日,大阪府立看護大学学生自治会主催で行われた「アフリカ友の会」代表の徳永瑞子さんの講演を聞きました。徳永さんは,看護婦,助産婦であり,中央アフリカ共和国で活躍しておられる方です、中央アフリカ共和国では,現在HIV感染者およびエイズ発病者が全人口の15%を占め,彼女の活動対象も当然のことながら,これら感染者および発病者が中心となっているとのことです。
しかし,日常活動は疾病との闘いというよりも,貧しさとの闘いであるとのことでした。まず住民の生活を支えること,特にHIV感染者や発病者にとっては,発病予防や治療もさることながら,その前に生活を支えていく必要がある。そこで,日常業務は対象者の収入を確保するため,彼らにできる衣類の縫製のための布の裁断をすることであるが,彼女は看護職として,そのことに精を出すことに何の矛盾も感じないと言います。すなわち「生活の中で住民を支える」ことこそ看護の原点であると考えているから,ということでした。そして,今の日本の看護婦たちは,高度医療とチーム医療の中で,自らの目的意識が稀薄になり,責任性も不明確となって,「看取り」の心を失いつつあるのではないかと,問題提起と教育的配慮とを込めて話されました。
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