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最近1年間の冠動脈疾患をめぐる話題
わが国における冠動脈疾患患者は年々増加しており,今や死亡原因の第2位となり,その治療法の改善あるいは予防の充実が急務となっている.そのなかで冠動脈インターベンション(PCI)はその器具や技術の進歩により急速な勢いで普及しつつある.新しいステントやdeviceの導入,ステント挿入後の高圧後拡張,cutting balloonの併用,IVUS併用による拡張法の選択,といった工夫によって今や左主幹部(LMT)病変までもその適応となってきている.また,かつて大きな問題であった「急性閉塞」についてもアスピリン+チクロピジンという薬物療法の確立でほぼ解決がなされたといってもよい.さらに将来本邦でもGP Ⅱb/Ⅲa阻害剤が使用可能となれば,この問題についてさらなる改善が見込まれる1,2).しかしながら,このような技術的工夫や薬物療法の進歩をもってしても,「再狭窄」は未だ未解決の大きな問題である.言い方をかえると,これまでのPCIにまつわる技術的工夫や薬物治療はその多くが再狭窄の防止を目的として行われてきたにもかかわらず,いずれもが決定的な成果を挙げられないまま現在に至っている.
20世紀後半に始まり現在まで急速な発展をとげてきたPCIにおいて,現在もっとも注目を集めているのはdrug-eluting stent(薬剤溶出ステント)の使用による再狭窄率の劇的な改善の可能性である3,4).その先駆けとなったのはRAVEL試験5,6)である.この試験は欧州と中南米の19施設で行われたdouble blind, randomized trialで,マクロライド系抗生物質として発見され,免疫抑制剤として開発されたシロリムス(商品名:ラパマイシン)をコーティングしたステントと,同じ構造で何もコーティングしていないステントについて血管内腔の変化や再狭窄率,イベント発生率などを比較したものである.その結果,ステント留置6カ月後の時点でシロリムス溶出ステントの再狭窄率は0%(非コーティングステントでは26.6%),イベント発生率も5.8%(同28.8%)と,再狭窄だけでなくイベント発生率まで劇的に改善させた.さらに,米国が中心になって行われている1,100例あまりを対象としたSIRIUS試験もまもなく発表予定であるが,途中経過では再狭窄率2%(非コーティングステントでは31.1%)と良好な結果が報告されている.欧州では今年すでにシロリムス溶出ステントが発売された.
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