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高脂血症,ことに高LDL血症が粥状動脈硬化に基づく心筋梗塞の発症に密接に関わり合いがあることは,家族性高コレステロール血症(FH)患者の病態から非常にはっきりした形で明らかにされた.無論,この常染色体性優性遺伝病であるFHの経験ばかりでなく,Framingham Study1)に代表される多くの一般の人を対象とした疫学調査からも,高コレステロール血症,高LDL血症と粥状動脈硬化に起因した心筋梗塞症発症との関係は相関があることが明らかにされてきている.したがって,学問の流れは,高コレステロール血症,高LDL血症の病態解明や,高LDL血症がいかなる機序で粥状動脈硬化症を引き起こして来るかということに向かうのは必然であるといえよう.
さてGoldstein, Brown博士は,FHの原因がLDL受容体の異常により惹起されることをつき止めた2).患者と正常人の皮膚の線維芽細胞を用いて,細胞のコレステロール代謝の制御がどのように行われているかを確認する作業から始めた.当時すでにLDL,HDLの2つのリポタンパク分画によりコレステロールが運ばれること,コレステロールはあらゆる細胞で合成されるが,主たる臓器は肝臓であることが知られていた.しかし,pointは前述したように線維芽細胞を使ったことであり,一人一人の患者さんを直接(例えば肝臓を)調べたわけではないことであろう!! 彼らは,正常線維芽細胞にはコレステロール合成系が存在し,細胞外からのコレステロールの過剰流入により合成が制御されていること,その合成の律速段階がHMG-CoA還元酵素であることをつきとめた.そこでコレステロールのcarrierであるLDLを培地に加えることにより,FHと正常人の線維芽細胞のコレステロール合成の制御をHMG-CoA還元酵素の活性を指標に検討し,FH患者のHMG-CoA還元酵素は制御されず,そのことから,FHの細胞表面には,LDLを認識する機構が欠如していることを見出し,LDL受容体の発見につながった.次の問題は,in vivo,つまり生体中でどの臓器がLDL代謝の中心であるのかという疑問が出てくる.われわれは幸いFHのモデルWHHLウサギ(LDL受容体欠損)を使用して,正常ウサギとVLDL→IDL→LDLの代謝動態を比較検討する機会を得た.125I-apoB標識VLDLの代謝動態を経時的に追跡した結果,肝臓のLDL受容体の発現量が血中LDL値を制御していることを見出した3,4).つまり,血中LDLの70%が肝臓のLDL受容体によって代謝を受けるという事実が見出された.
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