Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
生活習慣病とは「食習慣,運動習慣,休養,喫煙,飲酒などの生活習慣が,その発症・進行に関与する疾患群」と定義されている.病気の発症率はその時代の環境によって大きく影響されるが,近年のライフスタイルの欧米化はその変化を顕著にさせてきた.第二次世界大戦後の急激な環境の変化は日本人の代謝病態にも大きな変化をもたらし,最近では環境要因と多遺伝子を基盤とした糖尿病,高脂血症,高血圧,肥満症などの疾患が増加している.わが国における栄養摂取量に関していえば,総摂取カロリーは近年必ずしも増加していないが,摂取内容の変化,すなわち脂肪(特に動物性脂肪)摂取量の増加,炭水化物摂取量の減少が特徴的である.さらに,近年は車社会における運動量の減少に伴って相対的栄養過多の状況にあり,欧米型の生活習慣に適応できない素因を有する人々では脂質代謝異常,糖代謝異常や高血圧,動脈硬化性疾患などの合併が問題となっている.
日本人の平均Body Mass Index(BMI)は,若年女性を除くと男女とも全ての年齢層で増加しつつあり,BMIが25を超える肥満者の数も増加している.一方,血清脂質値に関しては,総コレステロール値が徐々に上昇しており,男女とも低下傾向の米国人の値に接近している.さらに,わが国では糖尿病や耐糖能異常の患者数も増加してきており,将来の動脈硬化性疾患の発症率の増加が危惧されるところである.
日本人の冠動脈疾患患者では,家族性高コレステロール血症のような著しい高コレステロール血症を示す遺伝性疾患を例外とすると,コレステロールは必ずしも著明な高値を示さない場合が多く,高脂血症,糖代謝異常,高血圧などの動脈硬化の危険因子が,程度は軽くとも1人の患者に集積して存在する場合が多いことが明らかになってきた.われわれは,腹腔内内臓脂肪(腸間膜脂肪や大網脂肪)の蓄積が,肥満者だけではなく正常体重者においても,高脂血症,糖代謝異常,高血圧などの冠危険因子の集簇を引き起こすことを報告し,内臓脂肪症候群1)として提唱してきた.このようなマルチプルリスクファクター症候群は最近メタボリックシンドロームとも呼ばれる.メタボリックシンドロームでは背景にインスリン抵抗性が存在する場合が多いが,その上流が何かは必ずしも明らかにされておらず,われわれが提唱したように内臓脂肪の蓄積がその上流にあるものと推察される.内臓脂肪はエネルギーやショ糖摂取の過剰,運動不足,飲酒,喫煙などの生活習慣によって蓄積が増加する.本稿ではこのような生活習慣病としての高脂血症について解説する.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.