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はじめに
ノルエピネフリン(NE)は神経伝達物質として交感神経終末から放出され,心臓においては心拍数,心収縮の調節に極めて重要な役割を果たしている.生理的条件下では心臓交感神経終末からのNEの放出は循環中枢からの情報によって制御されているが,心虚血時においてその放出は生理的な制御を逸脱し,むしろ致死性不整脈,心筋壊死巣の拡大,血液凝固能の亢進など虚血に伴う障害助長因子となることが示唆されている1,2).したがって,急性心筋梗塞時の複雑な病態の解明とその治療には,まず虚血部の心臓交感神経終末におけるNE動態を把握することが重要である.
拍動する心臓の交感神経活動を評価する方法として,放射性同位元素でラベルしたNEの測定や電気的交感神経活動の測定などが従来から行われているが,こうした方法で虚血領域に特定した心臓交感神経のNE動態を知ることは極めて困難である.われわれは,マイクロダイアリシス法を心臓に用いて,左室領域に特定した心臓交感神経終末のNE動態をモニターする方法を確立し3,4),様々な実験を重ねてきた.その結果,心臓マイクロダイアリシス法がin vivoにおいて虚血部心臓交感神経終末からのNE放出をモニターするのに有用であることを明らかにした5,6).さらに,ダイアリシスプローブを介して各種阻害剤を虚血部の特定領域にのみ投与したり,交感神経終末におけるNEの代謝物質であるジハイドロキシフェニルグリコール(DHPG)をモニターすることにより,神経終末内のNE動態やそれに伴うイオン動態の関与を把握することができるようになり,生理的条件下と心虚血時の心臓交感神経終末におけるNE動態の差異を報告してきた7~9).
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