巻頭言
心不全とマウスの心カテ
小室 一成
1
1千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学
pp.219
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100640
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ほとんど全ての先進諸国において心血管疾患が死因のトップであり,また心不全はあらゆる心疾患の終末像である.したがって,以前より心不全は重要な疾患であるという認識はあったが,近年ますます注目されている.
その理由の一つは,アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬,β遮断薬などが心不全薬として大変有効であり,生命予後をも改善することが明らかになってきたからである.このことは,手のほどこしようもない重症末期疾患では画期的なことであり大変喜ばしいことであるが,逆に生命予後が伸び,入退院を繰り返すようになったことより,医療費の高騰につながった.全疾患中医療費のトップは心不全なのである.そこで虚血性心疾患が多く,心不全の多い欧米先進諸国では癌と並んで心不全の制圧に力を注いでいる.我が国においても生活習慣の欧米化や急速な高齢化社会の到来により,心筋梗塞の増加から心不全の増加が当然予想される.日本人は人種的に虚血性心疾患になりにくいのではないかと考えている方もいるかもしれないが,ハワイやカリフォルニアに移民した日本人が米国人とほぼ同率で心筋梗塞を発症している疫学研究の結果はその考えが完全に誤りであることを示している.
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