Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
アルドステロンの心筋線維作用
10年以上前に,Weberらはラットにおいてアルドステロンが心筋線維作用を有し,その作用は血圧と独立していると報告した1).アルドステロンが腎血管性高血圧発症のラットにおいて,心筋線維化は高血圧性肥大を生じている左室に加えて,肥大を生じていない右室にも認められた.したがって,血行動態のみでは説明がつかず,内分泌的因子の関与が考えられた.更に両腎摘出ラットにアルドステロンとナトリウムを持続投与したところ,アンジオテンシンIIはネガティブフィードバックによって抑制されているにもかかわらず,著明な心筋線維化が認められた.更には,この心筋の線維化は抗アルドステロン薬であるスピロノラクトンにより抑制された2).これらの研究から,アルドステロンが心肥大の程度や血圧上昇度とは独立して心筋線維化作用を有することが明らかになった.心肥大や心筋線維化は心室リモデリングを来し,最終的には収縮機能,拡張機能の低下を来し心不全に至る.
慢性心不全の病態とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
心不全の原因は,高血圧性心疾患,冠動脈疾患,心筋疾患など様々であるが,欧米の大規模研究の結果から,予後増悪因子として,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系や交感神経系などのcardiotoxicと考えられる神経体液因子の関与を示唆している.慢性心不全の病態として,心筋収縮力低下に起因し生じる交感神経系やレニン・アンジオテンシン系の亢進,神経体液因子による血管収縮による後負荷の増加による心筋障害の進展という悪循環サイクルが存在する.その治療戦略として,欧米の大規模研究において強心薬,血管拡張薬,神経体液因子阻害薬(ACE阻害薬,スピロノラクトン,β遮断薬)が検討された結果,現時点では多くの報告でACE阻害薬,β遮断薬などの神経体液因子阻害薬が予後を改善することについては確立されている.最近開発されたアンジオテンシンII受容体拮抗薬が期待されたほどには予後を改善しなかった結果もあり,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬のなかで抗アルドステロン薬が注目されている.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.