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特集 呼吸器疾患:症例から病態生理学/分子病態学へ
リンパ脈管筋腫症
Lymphangioleiomyomatosis
安藤 克利
1
,
瀬山 邦明
1
Katsutoshi Ando
1
,
Kuniaki Seyama
1
1順天堂大学医学部呼吸器内科
1Department of Respiratory Medicine, Juntendo University School of Medicine
pp.991-999
発行日 2016年10月15日
Published Date 2016/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404206047
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はじめに
リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis;LAM)は,平滑筋様細胞の形態を示すLAM細胞が,肺,体軸リンパ系(縦隔,上腹部から骨盤部にかけての後腹膜腔)で増殖して病変を形成し,病変内にリンパ管新生を伴う腫瘍性疾患である.通常,生殖可能年齢の女性に発症し,労作性の息切れ,気胸,血痰,乳び胸水などの胸郭内病変による症状や所見を呈することが多い.本疾患は,結節性硬化症(tuberous sclerosis complex;TSC)患者に合併するTSC-LAMと孤発性でTSCに合併していないsporadic LAMに分類され,日本での有病率は100万人当たり約1.9〜4.5人と推測されている希少難病である1,2).
近年,LAMの遺伝子異常や病態の解明が進歩し,LAM細胞の増殖にラパマイシン標的蛋白質(mammalian target of rapamycin;mTOR)が重要な役割を果たすことが判明した.そのため,mTOR阻害剤であるラパマイシン(シロリムス)が分子標的薬となる可能性が浮上し,2008年のCAST試験3)や2011年のMILES試験4)などの大規模な臨床試験により,その有用性や安全性が証明された.その後,本邦において,日本人LAM患者に対する2年間のシロリムス投与の安全性評価を主目的とした医師主導治験(MLSTS試験)が実施され,安全性に重大な問題は認められないことが確認され,商品名ラパリムス®が薬事承認された.
本稿では,シロリムスが奏効した症例を提示したうえで,mTORシグナル伝達系を中心としたLAMの病態生理学/分子病態学について解説する.
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