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はじめに
生体の免疫系には獲得免疫と自然免疫があり,相補的に働くことで生体防御を担っている.獲得免疫はTリンパ球やBリンパ球により,抗原特異的な感染細胞傷害,抗体産生を介して生体防御に関与している.一方,自然免疫は感染初期に菌体,ウイルスに対して生体を防御する最前線の免疫系である.自然免疫は従来好中球,マクロファージ,樹状細胞が菌体の貪食,消化,抗原提示を非特異的に行うと考えられてきた.しかしながら,種々の菌体成分を認識する受容体としてヒトToll-like receptor(TLR)が1997年にMedzhitovらにより同定されてから1),自然免疫の分子機構の理解が急速に深まっている.現在10種のTLRがクローニングされ,そのリガンドは40種以上が同定されている2)(表1).
自然免疫系がアレルギー性炎症に及ぼす影響は,アレルギー性炎症形成の前後の2相に大別されると考えられる.第1相に関しては,hygiene hypothesis(衛生仮説),すなわち幼少期の菌体成分への曝露が,アレルギー疾患減少に関与する可能性が述べられている.この仮説の機構には不明な点が多いが,TLRを介した自然免疫系の賦活化がTh1/Th2分化に与える影響に関する報告をまとめてみる.第2相に関しては,ウイルス感染などによる喘息症状の増悪が臨床疫学的に古くから知られ,本来生体防御的に働く感染時の炎症が既存のアレルギー性炎症を増悪させることが想定されている.アレルギー性炎症構成細胞におけるTLR発現,機能の基礎的検討がその機序をさらに明らかにする可能性があり,好酸球,好塩基球,肥満細胞,気道上皮細胞におけるTLR発現と機能を整理してみたい.また,最後にTLR多型とアレルギー疾患の関与に関する現時点での報告について述べる.
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