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はじめに
DNAは遺伝情報の伝達分子であり,蚤白質をコードする生命の設計図として機能していると一般に考えられていたが,近年DNAそのものが免疫活性を持つことが注目されている.古くから結核菌とオイルを混合したフロイトアジュバンドを抗原と混ぜ合わせると免疫活性が増強することが知られていたが,Tokunagaらはこのアジュバンド効果が結核菌のDNAに起因することを発見し,BCGから精製したDNAがNK細胞を活性化し,抗腫瘍効果を誘導することを報告した1,2).さらに,この免疫活性を持つDNA配列は特定の6塩基で構成されるパリンドローム構造(5’-purine-purine-CG-pyrimidine-pyrimidine-3’)を有するオリゴDNAであることを報告した3).一方,アンチセンスの研究をしていたKriegらは,メチル化されていないCG配列がマウスB細胞を活性化させることを発見し,CGを中心とする特定の塩基配列に刺激活性があることを明らかにした4).このDNA配列はCpGモチーフと呼ばれ,細菌やウイルスの遺伝子に特有の塩基配列である.哺乳類の免疫システムは,このCpGモチーフをToll-like receptor 9(TLR9)で認識すること5)で細菌が生体に進入してきた危険信号として捉え,感染に対する防衛機構を活性化させる.
CpGモチーフを含むDNA(CpGDNA)はB細胞を増殖・活性化させ,IL-6や抗体産生を誘導し4),NK細胞のIFN-γ産生とキラー活性を増強させる6).また,マクロファージや樹状細胞を活性化させ,IL-12やTNF-αを産生し7~9),Th1細胞を分化誘導することが報告されている10,11).このようにCpGDNAは強力に免疫応答を誘導しTh1誘導能を持つことから,悪性腫瘍に対する免疫療法や感染症のワクチン,アレルギーに対する免疫療法への応用の可能性が報告されている.しかし,CpGDNAは大量投与により有害な炎症反応を惹起し,致命的なトキシックショックを起こすこと12,13),気道内や関節腔内に投与すると肺炎や関節炎を引き起こすことより,CpGDNAは細菌やウイルスの構成要素のなかでLPSと同様に有害な炎症を引き起こす主要なコンポーネントでもある14,15).また,自己免疫反応や抗DNA抗体の誘発される可能性も報告16~18)されていることより,CpGDNAの臨床応用のためには種々の乗り越えるべき課題があった.
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