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近年,わが国では高齢化,食習慣の欧米化が進み,動脈硬化を要因とする冠動脈疾患,脳血管疾患が三大死因の二つを占めている.一方,高齢化社会に伴い,いわゆる動脈硬化性疾患だけでなく成人の後天性大動脈弁狭窄症の患者も増加している.成人の大動脈弁狭窄の基礎となる病態は大動脈弁への脂質の沈着,石灰化,炎症性細胞の浸潤といった動脈硬化と共通の特徴を有している1).さらに,大動脈弁の狭窄性変化は加齢とともに進行し,高血圧,高脂血症,糖尿病,喫煙などの,いわゆる冠動脈疾患の危険因子により進行が加速されることが示されている2).
大動脈弁狭窄症の治療のゴールドスタンダードは弁置換術であることはいうまでもないが,患者の多くは高齢であるだけでなく,冠動脈疾患,肺疾患,腎機能障害,脳血管障害などの種々の基礎疾患を有している.弁置換術は現在では完成された手術であり死亡率は低いが,低心機能の症例や種々の基礎疾患を有するハイリスク症例に対する周術期死亡率は10~20%以上といまだに高率である3~5).そのため,手術に伴うリスクの観点から弁置換術の適応とならないケースにしばしば遭遇する.
こうした手術不適応例に対して,1986年にCribierらが世界初の経皮的大動脈弁バルーン拡張術(BAV:balloon aortic valvuloplasty)を行った3症例を報告して以来6),欧米ではより侵襲度の低い治療法として数々の変遷を経ながらも発展を遂げ,今日でも依然として一治療法としての位置を確立している.しかしながら,術後の弁口面積が弁置換術に比して小さいこと,早期の再狭窄などの問題点により根治療法とはなり得ていない.最近ではこれらの問題を解決すべく,経皮的人工弁留置術(PAVR:percutaneous aortic valve replacement)の試みがなされ成果を挙げつつある.
本稿では成人の後天性大動脈弁狭窄症に対するカテーテルインターベンションのこれまでの変遷および最近の知見を紹介する.
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