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肺癌の画像診断をめぐる最近1年間の話題
肺癌における画像診断の役割には,病変を検出すること,病変の良性・悪性を鑑別すること,そして肺癌と分かった場合の病期や進展度を判定すること,の三つが含まれる.肺癌画像診断の進歩というためには,この三つのうち,少なくとも一つにおいて診断能が向上するものでなければならないが,その多くは画像診断機器の技術的な進歩に大きく依存している.1998年に臨床に導入されたマルチスライスCT(MDCT)は現在もなお進化を続け,今年には検出器列の数が64列の装置が登場し,数秒で全肺の薄層CTが容易に実施でき,高画質のMPR画像やMIP画像,三次元画像が簡単に得られる時代になってきた1).肺癌における臨床使用が増加しているポジトロンCT(PET)もさらにCTを組み込んだPET-CT装置が登場してきている2,3).また,MRIの領域でも全身スキャンのアイデアが提案されている.このような背景のなかで,これらの新しい画像技術を応用した肺癌診断法の開発や臨床的有用性の検証が現在の研究の中心となっている.
病変検出における大きな流れは低線量CT(LDCT)を用いた肺癌スクリーニングで4~6),同時に病変の検出をサポートするコンピュータ支援診断(computer assisted diagnosis,CAD)の研究も重要性を増してきている7,8).腫瘤性病変の画像による質的診断は,本来,生検技術の進歩によって役割が小さくなるはずのものである.ところが,MDCTの導入とCTスクリーニングの増加から形態的に特徴の乏しい多数の小結節が検出されるようになり,また生検も難しい例が多いことから,逆に画像による質的診断が再検討されてきている.一つはFDG-PETを用いてグルコース代謝の多寡から良性・悪性を鑑別しようとする流れであり9,10),もう一つはCTの経時的変化から三次元的に結節の容量変化を捉え,良性・悪性を判断しようとするものである11~13).CTでの経時変化の評価には観察期間が必要となるために,どのようにフォローアップを行うのか,生検や手術を含めた肺野結節の取扱い方も大きな臨床的研究のテーマとなっている14~16).画像を用いた肺癌の病期診断でのトピックスは,やはりFDG-PETである.FDG-PETによる縦隔リンパ節転移の診断能はCTより明らかに高いことを示すエビデンス論文がいくつも発表され17~19),さらに全身スキャンの特徴を生かして遠隔転移診断にも有用であることが明らかになってきている10).現在,コストも考慮しながら肺癌の病期診断にどのようにPETを組み込んでいくかが大きな課題となっている.
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