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特集 強心薬のコントロバーシ-急性心不全に使うべきか,避けるべきか
急性心不全に強心薬をこのように使ってみよう
Clinical Use of Inotropic Therapy for Acute Heart Failure
安村 良男
1
Yoshio Yasumura
1
1独立行政法人国立病院機構大阪医療センター循環器科
1Department of Cardiology, Osaka National Hospital
pp.909-913
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100359
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急性心不全の病態
急性心不全は,非代償性,進行性の心不全で,限られた時期に改善を認めなければ著明な心不全症状の出現,血行動態の破綻,心原性ショックまたは死へと進行する臨床状態と定義される.急性心不全の病態は,心機能の低下に起因した1)血行動態の異常,2)神経体液性因子の亢進,3)心筋収縮能・拡張能の可逆性低下から成る.血行動態の異常は左室拡張末期圧(LVEDP)の上昇と組織低灌流に集約される.また,血行動態の異常は左室の形態の変化を惹起し,機能的僧帽弁逆流や三尖弁逆流の原因となり,さらなる血行動態の異常を引き起こすことがある.血行動態の異常は神経体液性因子の亢進を引き起こし,さらなる血行動態の異常につながる.急性心不全そのものが一過性に心機能を低下させる可能性もある.すなわち,急性心不全時の血行動態の異常や神経体液性因子の亢進は頻脈,LVEDPの上昇,組織カテコラミン濃度の上昇を介して,tachycardia induced cardiomyopathy,心内膜下虚血,catecholamine toxityを介して心機能低下がもたらされ,さらなる血行動態の異常につながると考えられる.
急性心不全治療においては基礎心疾患を基盤とした急性心不全の病態,なかでも血行動態の十分な解析が不可欠である.十分な病態の理解の有無は特に重症例の治療成績を左右すると思われる.
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