Japanese
English
特集 呼吸・循環器治療薬の狙いと効果の現実
強心薬と慢性心不全
Positive Inotropic Therapy for Chronic Heart Failure
横田 慶之
1
Yoshiyuki Yokota
1
1神戸大学医学部保健学科
1Faculty of Health Science, Kobe University School of Medicine
pp.809-816
発行日 1996年8月15日
Published Date 1996/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900006
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
心不全では心筋収縮心不全に基づく心ポンプ機能の低下や末梢循環不全を防止するため,神経体液性因子をはじめとする種々の代償機転が働いている.交感神経系やレニン・アンジオテンシン系の賦活は心筋に対する陽性変時・変力作用や末梢血管収縮作用,体液貯留作用を介して心拍出量と末梢重要臓器灌流圧を保持する.このような心不全における代償機転は短期的には極めて有用であるが,これら代償機転の長期間の作動は逆に心不全をさらに悪化させることが明らかとなってきた.すなわち長期間持続する交感神経刺激は心筋β受容体のdown regulationを招くため,心筋収縮性の増大にも結び付かず,心拍数増加は心筋酸素消費量を増加させて心筋虚血を増大させる.また,カテコラミンやアンジオテンシンIIは末梢動脈収縮による後負荷増大や心筋障害をもたらし,心ポンプ機能はさらに悪化していく.また,容量血管収縮や体液貯留は心臓に対する前負荷を増大させて,肺あるいは諸臓器のうっ血をもたらす.
このような心不全の悪循環を断ち切るのが心不全治療の基本となる.すなわち,心筋収縮力低下に対しては強心薬,前負荷増大に対しては利尿薬,後負荷増大に対しては血管拡張薬を用いるが,特に心筋収縮性を増強させる強心薬は慢性心不全の基本病態を改善させる薬剤として最も期待され,その開発に努力が注がれた.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.