巻頭言
数字の一人歩き
金沢 実
1
1埼玉医科大学呼吸器病センター呼吸器内科
pp.773
発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100344
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重症急性呼吸器症候群(SARS)や鳥インフルエンザなど医学に関する新しい情報の伝達手段として,マスコミ報道,インターネットのホームページ,学会発表,電子ジャーナルもしくは印刷された論文などがあり,それぞれ情報伝達の速さと確かさとがともすれば相反する事態がみられる.このような情報洪水のなか,医療現場で受け入れられている数値と事実の間にはギャップが少なくない.
インフルエンザの迅速診断は発症から48時間以内に行うことが定まっているが,この決まりは保険採用のためであって局所の抗原の有無とは関係がない.48時間以降であっても迅速診断はしばしば陽性を示し,免疫能低下例では数週間にわたって陽性が持続することもある.したがって,必要があれば48時間以降でも検査を行わざるを得ない.また,ノイラミニダーゼ(NA)阻害薬は発症後36時間以内に開始し5日間の投与が認められ,健常成人で症状を約1日短縮し,ハイリスク者で肺炎の入院数を減らすとされる.しかし,免疫能低下例では5日投与では症状が改善せず,またウイルス排出がしばしば遷延する.
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