Japanese
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特集 ARDS/ALIの薬物療法
サイトカイン関連薬および抗炎症薬
Anti-cytokines and -inflammatory Approaches for ARDS/ALI
小泉 知展
1
Tomonobu Koizumi
1
1信州大学医学部内科学第一講座
1The First Department of Internal Medicine, Shinshu University School of Medicine
pp.787-792
発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100340
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はじめに
急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)は,肺血管内皮および肺胞上皮細胞の障害を来し,透過性亢進により間質・肺胞の浮腫を生じる病態である.病理学的には早期に炎症細胞浸潤,ヒアリン膜形成,後期では線維化を来す.その本態は,様々な原因疾患に伴う刺激によりTNF-αやinterleukin-1,6,8(IL-1,6,8)などのサイトカイン産生や接着因子などの発現により好中球を主体とした炎症細胞が肺内に集積,活性化,さらに他のサイトカイン,活性酸素,蛋白分解酵素,アラキドン酸代謝産物などの炎症調節因子の産生放出により,肺血管内皮細胞および肺胞上皮細胞の障害を惹起する1).
このような病態に関与するそれぞれの因子に対応し,その治療戦略が検討されてきた.治療効果として改善の可能性のある薬剤が次々に開発され,基礎実験から臨床試験へと進められ検討されてきた.一方で,ARDSの原因となる基礎疾患が多彩であること,病態変化が速やかであること,予後不良な疾患で死亡率が高い病態であること,臨床試験のエンドポイントの設定などの理由から,薬物効果の評価が必ずしも統一化されているわけではない2).
本稿では,いままでに開発されたサイトカイン関連薬および抗炎症薬について比較試験に基づいた薬物治療効果の現状について概説する.
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