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シックハウス症候群をめぐる最近1年間の話題
1 はじめに
シックハウス症候群(sick house syndrome: SHS)の概念は住居が原因となって現れる愁訴や疾病の総称として用いられているが,医学的には確立されていない.1970~80年代に欧米のいわゆる省エネビルで,ビルの居住者から眩暈,吐気,頭痛,平衡感覚の失調,眼・鼻・咽喉痛,粘膜や皮膚の乾燥感,咳,喘鳴などの呼吸器系の諸症状を訴える苦情がみられるようになり,sick building syndrome(SBS)としての概念が提唱され,1983年にWorld Health Organization(WHO)が定義1)を発表した.その後も1989年欧州共同体委員会(Commission of European Communities:CES)2)や1990年米国胸部疾患学会(American Thoracic Society:ATS)3)が定義を発表している.Sick house syndromeはこれから派生した和製英語であるが,必ずしも医学的に確立された疾患概念ではなく,混乱が生じている状況である.
近年,わが国においてもSHSが社会的にも問題となり注目され,室内空気質健康影響研究会では「居住者の健康を維持するという観点から問題のある住宅においてみられる健康障害の総称」を意味する用語であるとすることが妥当との見解が出されている.SHSの発症には,建築に用いられる材料,接着剤などから発生する揮発性有機化合物(volatile organic compound:VOC)が深く関連し,そのなかでもホルムアルデヒド(formaldehyde:FA)の関与が注目されてきた.本稿ではFAの呼吸器系に及ぼす影響を中心に述べる.
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