コーヒーブレイク
シックハウス症候群
寺田 秀夫
1,2
1聖路加国際病院内科
2昭和大学内科
pp.68
発行日 2000年1月15日
Published Date 2000/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904294
- 有料閲覧
- 文献概要
ここ2~3年わが家の近くで,相次いで新築マンションや一戸建て住宅の建築が繰り返され,その騒音,工事関係車両の駐車による交通障害で,多少困惑しているこのごろである.道端の電柱には新築家屋の見学や売り出しの広告が,目に入らない日はない.そして昔と違って新建材を用いるためか,短期間のうちに完成し,新しい家族が何時の間にか住んでいる.こんなに沢山の新築住宅やマンションが本当に快適な住居なのであろうか?,いつも疑問に思っている.そのわけは,ここ1~2年わが国でも漸く室内空気汚染の一つとしての化学物質過敏症とも見なされるシックハウス症候群(sick house syndrome;SHS)がしばしばマスコミの話題となり,自分もそのような患者さんをときに経験しているからである.
シックハウス症候群は1973~1974年のオイルショックによるエネルギー危機を契機として,北米,英国,北欧を中心として,特定の居住環境に限って,気道症状,皮膚・粘膜症状,中枢神経症状など,多彩な身体症状を訴える者が急増し,シックビルディングシンドローム(sick buildingsyndrome;SBS)とも呼ばれ注目を浴びるに至った.特に1977年以降,省エネルギーが建築設計上①室内気換気の削減と②空調,加湿システムの設置を定着させてきたため,換気の削減は室内気に含まれる汚染物質の増加をもたらし,また空調設備は汚染の拡大をもたらす結果となった.さらに相次いで登場する一般住宅での新建材による化学物質は個人により多彩な化学物質過敏症を引き起こしている.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.