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CTをめぐる最近1年間の話題―ヘリカルCTからマルチスライスCTへ
循環器疾患の画像診断におけるCTの位置はこれまで非常に低いところにとどまっていた.これは時間分解能によるところが大きい.1989年のヘリカルCTの開発により,広い撮像範囲の高分解能画像が短時間で得られるようになり,画像診断のなかでCTは重要な位置を占めるようになったが,循環器疾患,特に呼吸運動に加え,拍動を伴う心臓の画像診断においては,時間分解能が依然低く不十分なものであった.一方,心臓・大血管系にターゲットを絞り,超高速撮像が可能な電子ビームCT(electron-beam CT:EBT)が開発され,循環器疾患に対し応用された.EBTは断層画像を得るために,管球を回転させる代わりに電子ビームを回転させることで,最短50msecという高い時間分解能を達成し,心奇形,冠動脈などの解剖学的評価,左室収縮能などの機能的評価,またカルシウムスコアリングなど,CTによる心臓画像診断法の中心をなしてきた.しかし,価格や汎用性,低い濃度分解能や空間分解能といった点が問題となり,導入は循環器専門施設や一部の大学病院などに限られた.
1998年にそれまで体軸方向に一列の検出器しか備えていなかったヘリカルCTに対し,多数列の検出器を並べて同時に4スライスの画像データの収集が可能なマルチスライスCT(multi-slice helical CT:MSCT)が開発され,その臨床応用が始まった.従来のヘリカルCT(single-slice helical CT)に比べ,さらに時間分解能,空間分解能が向上したが,1mm以下の薄いコリメーションを用いることにより特に体軸方向での空間分解能が向上し,得られる等方性(isotropic)データは様々な三次元画像への応用が容易となった.
さらに心電図同期画像再構成法の開発は,心臓,特に冠動脈の画像診断法としてのMSCTの位置付けを非常に高めることとなった.これは画像データと同時取得した心電図波形を使用して,得られた容積データ(volume data)の中から同時心時相のデータだけを取り出して断層画像を再構成する方法であり,これにより最短100msecの時間分解能の静止画像が得られるようになった1).これにより低侵襲性,低コスト,かつ簡便な冠動脈の評価法としての応用が可能となった.
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