巻頭言
禁煙国家を目指して
加藤 治文
1
1東京医科大学外科
pp.447
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100299
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肺癌罹患数は年々増加して,既に6万人を超過しており,10年後には10万人を超えると予測されている.死亡数も5万4千人に昇り,悪性腫瘍による死亡の第1位を占めるようになって久しい.
肺癌死亡や発病をいかに食い止めるかが,目下の課題である.その抑制策の一つが第一予防であるが,まず挙げられるのが禁煙である.早くから禁煙政策を実施している先進諸国では1980年頃から肺癌の死亡率の顕著な減少が得られ,米国でも近年減少効果が見られ始めている.この世界情勢の中で,わが国は発展途上国と同様に依然増加しており,早急に対策を講じても,欧米諸国に40~20年近くの遅れをとっている.禁煙は肺気腫,循環器疾患,皮膚疾患の原因にもなり,妊婦の喫煙は流産,奇形児の原因でもある.
昨年2月にWHOで「たばこ枠組み条約」が採択されたが,政府は消極的な態度をとっており未だ批准していない.一方で昨年5月に健康増進法が施行されたが,この点は政府もやっと前向きな態度を示そうとしている.
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