Japanese
English
綜説
喘息における気道平滑筋の役割
Role of Airway Smooth Muscle in the Pathophysiology of Asthma
久米 裕昭
1
,
伊藤 理
1
Hiroaki Kume
1
,
Satoru Ito
1
1名古屋大学大学院医学系研究科呼吸器内科学
1Department of Respiratory Medicine, Nagoya University Graduate School of Medicine
pp.57-64
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100222
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はじめに
気道平滑筋の収縮に伴う気道狭窄は,気管支喘息の基本的な病態である気流制限につながる.この疾患の特徴である気道過敏性の亢進は,非特異的な刺激に反応して気道平滑筋が容易に収縮する状態である.気道平滑筋量の増加は,気道壁のリモデリングを生じ,この疾患を難治化に導く.気道炎症の慢性曝露は気道平滑筋細胞の過剰な増殖反応,肥大と遊走能の亢進を介して気道平滑筋層の肥厚を生じ,結果として平滑筋の易収縮性と気道壁の弾性抵抗の増大による気道の狭窄とを来す.さらに慢性気道炎症は,気道平滑筋細胞が本来有するサイトカイン,ケモカイン,増殖因子,プロスタグランジン,細胞外基質(extracellular matrix;ECM)などの合成能を高める.このように,喘息患者の気道平滑筋は,収縮性が亢進するだけでなく,合成機能が変化することより気道炎症を助長するようになる.
最近では喘息患者と健常人との間の気道平滑筋細胞の機能の相違が解明されてきている.従来,気道平滑筋は,喘息発作時の気道収縮,つまり病態の最終表現にのみ関係するだけで病態の本質とは無関係と考えられてきた.しかし,このように最近の研究では,気道平滑筋は喘息の病態の根幹である好酸球性気道炎症に深く関わっていることがしだいに明らかになっている.
本稿では,喘息の病態・治療における気道平滑筋の役割について概説する.
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