特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集
免疫学的検査
自己免疫関連検査
抗平滑筋抗体
佐伯 千里
1
,
銭谷 幹男
1
1東京慈恵会医科大学消化器・肝臓内科
pp.466-467
発行日 2010年10月30日
Published Date 2010/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104869
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
抗平滑筋抗体(anti-smooth muscle antibody:SMA)は,ラット胃壁平滑筋に対する自己抗体であり,1965年,Jonsonらにより自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)患者の血清において陽性を示すことが報告された.そして,AIH同様,抗核抗体(anti-nuclear antibody:ANA)が陽性となる自己免疫疾患,全身性エリテマトーデス(systemic lupus eryhtematosus:SLE)などではSMA陽性例は稀であり,SMA高力価陽性はAIHに特徴的であるとされた.その後の検討でSMAは慢性活動性肝炎でも高率に陽性となることが報告され,主要な対応抗原はアクチンであることが示された.アクチンは生体内で筋組織以外にも広く存在し,また臓器特異性,種属特異性を欠くため,SMAの広範な反応性が示唆される.
ラット肝臓,腎臓,胃切片を用いた間接蛍光抗体法によるSMA染色では血管壁が染色され,胃では粘膜下筋板や平滑筋層が染色される.また,ラット腎切片を用いた染色パターンから尿細管が染色されるSMA-T(tubular),腎糸球体が染色されるSMA-G(glomerular),血管壁が染色されるSMA-V(vessels)の3種類に分類され,VGまたはVGTパターンはAIHに特徴的とされている.SMAは病態に自己免疫学的機序が関与するAIHをはじめ,ほかの慢性活動性肝炎の診断や分類に有用であり,本稿では臨床的に意義の高い肝疾患との関連について述べる.
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