Japanese
English
Bedside Teaching
アスベストと肺疾患
Asbestos-related Lung Diseases
中野 孝司
1
Takashi Nakano
1
1兵庫医科大学呼吸器内科
1Division of Respiratory Medicine, Department of Internal Medicine, Hyogo college of Medicine
pp.519-525
発行日 2006年5月1日
Published Date 2006/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100209
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はじめに
石綿(アスベスト)は優れた断熱性・耐久性・柔軟性があり,加工が簡単で,しかも安価であったため,極めて有用な天然資源として20世紀には大量に採掘された.しかし,強い発癌性が示されてからは,社会に脅威を与える危険物質に一変している.過去50年間に数百万人の職業性曝露があり,一般環境で低濃度曝露を受けた人数は計り知れない.アスベストによる肺疾患は,直接扱う職種での高濃度曝露だけでなく,低濃度曝露でも発生する.その病態は線維化と癌化であるが,アスベストの種類,曝露濃度,曝露期間,肺内滞留時間に影響される.石綿肺癌は高濃度曝露による肺の線維化(石綿肺)を先行疾患として癌化したものであり,一方,低濃度曝露で発生する中皮腫は,肺の線維化を伴わず胸膜が癌化する.大量のアスベスト消費を背景に,潜伏期間の長いアスベスト関連疾患は急増することが予測されている.
本稿ではアスベスト関連疾患の発生機序と臨床像について概説する.
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