- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
典型的な症例
【症例1】 64歳男性.25年間,削岩夫をしていた.患者はすでに退職している.
胸部単純X線写真(図1)では,両側肺野に多数の粒状影を認める.粒は上肺野に多く,癒合傾向を示している.比較的均一な大きさと考えられる.特に密度の高い部分では,大きな塊状巣を形成しているのがわかる(矢印).これが塵肺の大陰影,英語圏では,progressive massive fibrosis(PMF)と呼ばれるもので,塵肺の線維化巣である.もう一つ,両側肺門が腫大しており,いわゆるBHL (bilateral hilar lymphadenopathy)といわれる所見を呈している.
【症例2】 66歳男性.解体業に従事していた.患者はすでに退職しており,特に症状もない.
胸部単純X線写真(図2a)では一見問題ないように見える.しかし,両側の側胸部,肩甲骨が重なるあたりなどに肋骨陰影の内側に線状の陰影が認められる(矢印).さらに,肺野の陰影が所々増強しているように感じられる.こうした一連の所見は胸膜の肥厚があることを意味する.
CT写真の縦隔条件(図2b)では,両側の胸膜に沿ってうっすらと肥厚が認められる(矢印).一部で石灰化が認められるので,単純X線写真よりわかりやすい.
これは胸膜プラークの所見であり,両側性であること,職業上アスベスト曝露の可能性のある職業に従事していたことなどから,アスベストプラークと考えられる.
もし,片側にしかこうした所見がなければ結核性胸膜炎の跡などが考えられる.
塵肺の診断は,①しかるべき粉塵曝露歴,②胸部単純X線写真での塵肺陰影の存在,の二点が必須項目である.病理学的な塵肺所見の有無は問われない.したがって,塵肺の診断には胸部単純X線写真が不可欠である.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.