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English
綜説
慢性心不全におけるβ遮断薬治療―CIBIS IIIが教えてくれるもの
β-Blocker Therapy in Patients with Heart Failure: Lesson from the CIBIS III trial
安村 良男
1
,
北風 政史
2
Yoshio Yasumura
1
,
Masashi Kitakaze
2
1独立行政法人国立病院機構大阪医療センター循環器科
2国立循環器病センター心臓血管内科
1Department of Cardiovascular Medicine, National Hospital Organization Osaka National Hospital
2Division of Cardiology, Department of Internal Medicine, National Cardiovascular Center
pp.385-392
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100190
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CIBIS IIIの結果は慢性心不全患者にACE阻害薬(enalapril)とβ遮断薬(bisoprolol)を併用する場合,どちらを先に導入しても有用性に差がないことを教えてくれた.これまでのACE阻害薬やβ遮断薬の大規模臨床試験と併せて,個々の慢性心不全患者にどのようにβ遮断薬を導入するのがよいのかを考えてみたい.
ACE阻害薬やβ遮断薬の各単独治療よりも併用療法のほうがよい
ACE阻害薬は慢性心不全の予後を改善するが1),この改善は左室のリモデリング抑制によるところが大きい.一方,β遮断薬の予後改善効果が,いくつかの大規模試験によって示されてきたが,これらの試験では基本的にACE阻害薬が基礎薬として投与されており,β遮断薬の予後改善効果はACE阻害薬との併用効果の可能性がある.これはACE阻害薬が慢性心不全患者の予後を改善することが先に証明されたという歴史的背景による.β遮断薬が単独で慢性心不全の予後を改善するか否かを調べた大規模試験はないが,慢性心不全に対してβ遮断薬を用いたいくつかの大規模試験のメタアナリシスによれば,β遮断薬単独治療はACE阻害薬相当の予後改善効果が期待できそうである2).β遮断薬の心臓に対する効果(ACE阻害薬との併用効果かもしれない)はACE阻害薬単独治療と異なり,左室リモデリングを抑制するだけでなく,左室リモデリングを逆行させ,左室を小さくし,収縮性の改善をもたらすという特徴がある(逆リモデリング)3,4)(図1).
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