今月の主題 冠硬化症の新しい知見
冠循環の薬理
冠不全とβ遮断薬
岳中 典男
1
1熊大・薬理学
pp.160-161
発行日 1973年2月10日
Published Date 1973/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204595
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冠不全の病態生理
酸素不足による代謝異常 心筋組織の血行障害が起こった場合に,まず注目されることは酸素不足のための代謝異常であろう.診断の根拠となる狭心痛や心電図変化を招来させるものは,嫌気性代謝の結果生じた物質であろうと思われるからである.狭心痛はヒトの自覚症であるから,動物実験で再現することはできないが,心筋酸素不足時には心臓交感神経に求心性インパルスの増加することが報告されている1).心筋虚血時にはATP依存性の膜イオン交換に障害がおこり,早期に細胞内K+の喪失を招き,電気的に正常と異なる反応を呈する部位を生じ,心電図はそれを反映してST-Tの変化を示すようになる.
嫌気的代謝 嫌気的代謝では,解糖系の促進と乳酸の蓄積が顕著となる.ATPが減少し,AMP,ipなどが増加すれば,嫌気性解糖に関与する律速酸素の活性が上昇し,心筋エネルギーの大半は糖質により供給される.乳酸の利用は低下するだけでなく,最終の代謝物として冠静脈血中に放出され,冠動脈血乳酸量との較差が負に逆転する.心筋酸化還元電位も陰性化をきたす.
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