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特集 呼吸器疾患におけるアポトーシスの最新知見
アポトーシス研究の現状と今後の展望
Apoptosis Research: The current status and future prospects
高橋 良輔
1
Ryosuke Takahashi
1
1京都大学医学部神経内科
1Department of Neurology, Kyoto University Graduate School of Medicine
pp.7-11
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100136
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はじめに
アポトーシスは英国の病理学者Wylie,Kerrらによって形態学的に細胞が縮み,クロマチンが濃縮する特異な形態をとる細胞死として記載,命名された.機能的にはアポトーシスは細胞の自爆に例えられるように,シグナル伝達により積極的に引き起こされる細胞死である.多細胞生物では発生過程において,多くの細胞がアポトーシスを起こして正しい形態形成が行われることが知られており,プログラム細胞死と同義で使われることもある.一方,アポトーシスは発生過程だけでなく,成体となってからもDNA損傷を起こした細胞,不要になった炎症細胞などの除去に使われており,その阻害は癌や自己免疫疾患につながると考えられる.また,逆にアポトーシスが死ぬべきでない正常な細胞に起こると,AIDSや神経変性疾患の発症に結びつくと考えられる.
このような観点から,アポトーシスの分子レベルでの理解は様々なヒトの疾患の発症メカニズムの解明と治療法開発に非常に重要である1).これまでの研究により,アポトーシスはカスパーゼというシステインプロテアーゼの活性化によって起こることが明らかになってきた.
本稿では,これまでにその概略が明らかにされたアポトーシスのシグナル伝達経路の基本骨格をカスパーゼの役割を中心に述べ,ついでカスパーゼ非依存的細胞死について紹介し,さらにアポトーシスと呼吸器疾患との関連についても言及する.
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