特集 臓器(組織)とアポトーシス
特集に寄せて―アポトーシス研究の動向
藤田 道也
1
1浜松医科大学
pp.264-265
発行日 2000年8月15日
Published Date 2000/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902470
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発生のさいに不必要になった細胞(組織・器官)を除去するのに生理的細胞死が関与するという考えは,すでに1930年代にさかのぼる。これらの細胞死は時空的に予定されているのでprogrammed cell death(以下PCD)と呼ばれた。Apoptosisを意味するギリシア語はもともと「葉または花弁の散ること」を意味するという。そして,ヒポクラテスはこれをdecaying boneの形容に用いた。アポトーシスは1972年カーら(Kerr et al:Br J Cancer 26:239-257,1972)によって現在の定義を与えられた。
アポトーシスの典型的な形態変化として,クロマチンの周辺化,核の収縮と断片化,細胞膜を被り細胞小器官をもったままの細胞の収縮,細胞の断片(アポトーシス小体)化,隣接細胞による急速な貪食などがあげられてきた。このようなアポトーシスは予定細胞死を遂げる細胞に対して周到に組織化された「形態学的儀式」であるといわれる。分子生物学的にはクロモソームDNAのヌクレオソーム単位への分解によって特徴づけられる。アポトーシスは発生のさいに起こるだけでなく,種々の病的状況でも個体のために細胞死が必要な場合に起こる。ほかにも離乳後の乳腺における乳汁分泌細胞,分娩後の黄体細胞など使用済み細胞の除去があげられる。生理的細胞回転における不要細胞についても同じことがいえる。
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