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肉芽腫性肺疾患をめぐる最近1年間の全般的な話題
肉芽腫性炎症は,単核細胞の炎症局所への集簇と増殖を特徴とする巣状の慢性炎症であり,リンパ球,マクロファージ(Mφ),NK細胞,樹状細胞(DC)などが主な構成細胞である.抗酸菌や真菌,寄生虫感染に伴う慢性感染に起因する肉芽腫形成は,病原微生物の封じ込めと全身への感染播種の抑制を司り,生体の感染防御として機能している.一方,非感染性のものとして自己免疫性疾患であるWegener肉芽腫症,アレルギー性疾患である過敏性肺炎,化学物質吸入による慢性ベリリウム症,原因不明の全身性肉芽腫性疾患であるサルコイドーシスも病理組織学的に特徴的な類上皮細胞性の肉芽腫形成が観察されるが,生体防御としての機能を有しているかは不明である.その根底には自然免疫と獲得免疫の2種類の免疫応答が関与し,そのなかで遅延型過敏反応(DTH)が肉芽腫形成の中心に存在すると考えられている.その病態形成過程において免疫担当細胞間に様々なサイトカイン・ケモカインネットワークのクロストークが介在しており,近年の分子生物学の飛躍的な進歩によりノックアウトマウスやトランスジェニックマウスの解析から多くの知見が報告され肉芽腫性炎症の発症機構が解明されつつある1~3).
さらに,サルコイドーシスの発症には,遺伝的な背景の存在が推察されており,これは,家族集積性が存在することや人種・民族間で罹患率が異なることからも支持されている4).米国では,サルコイドーシスの原因,遺伝的要因,病態などを検索する目的でACCESS study(A Case Control Etiology Study of Sarcoidosis)が実施され,その結果,患者家族の発症危険率はオッズ比で4.7であり,主要組織適合抗原複合体(MHC)であるHLA領域遺伝子と強い連鎖が認められたとする報告もなされている5~7).HLA領域は6番染色体短腕(6p21)に存在する3.6Mbにわたる領域でありヒトゲノム中で最も遺伝子密度の高い領域として知られている.HLA領域にはMHC遺伝子群(MHCクラスI,II,III)以外にTNF遺伝子などの免疫系遺伝子が数多く存在しており,サルコイドーシスの疾患感受性遺伝子の検索領域として注目されている.ドイツの研究グループの報告によると,サルコイドーシス63家系によるゲノムワイド連鎖解析により染色体6p21に強い連鎖が認められており8),最近では,同領域の段階的SNPマッピングからBTNL2遺伝子との関連性を示している9).
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