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はじめに
持続する咳嗽を訴えて受診する患者の増加が,呼吸器やアレルギーの専門外来,プライマリケアの場のいずれにおいても指摘されている.咳嗽は患者を消耗させそのQOLを低下させるため,咳嗽患者への対応は重要である1,2).中枢性鎮咳薬による非特異的鎮咳はしばしば無効で,副作用が生じたり本来は生体防御機構である咳嗽3,4)の過剰な抑制にもつながるため,原因を見極めて適切に治療する必要がある.
慢性咳嗽(chronic cough)は,胸部X線写真で異常陰影や喘鳴などの有意な身体所見を示さず8週間以上持続する咳嗽と定義されるが5,6),その原因疾患と頻度は国や報告者により多様である(表1,2)1,2).欧米では後鼻漏および鼻炎,胃食道逆流,咳喘息が3大疾患であり3,5~7),米国からの報告では特に後鼻漏による咳嗽の頻度が高い3,5,7).英国では後鼻漏の診断名を用いる研究者は多くなく(慢性咳嗽の原因として疑問視する見解もある8),鼻炎や副鼻腔炎の診断名がしばしば用いられる.本邦の統計では胃食道逆流による咳嗽の頻度は低く後鼻漏は稀であるが,逆に本邦で頻度が高い副鼻腔気管支症候群やアトピー咳嗽9,10)の診断名は海外では使用されない.本稿ではこのような実態について考察を加えながら,本邦で頻度の高い原因疾患の臨床像,病態,診断のポイントを概説し,最後に診断のフローチャートを示す.
慢性咳嗽の原因診断は,病歴,各種の検査所見などから疑い(治療前診断),その疾患の特異的治療を行って奏効した場合に確定とする(治療後診断)1~3,5~7).治療の詳細は別稿に記載されるが,診断にも治療薬への反応性の確認が重要であるため,本稿でも簡単に触れることになる.また,3週以内に軽快する急性咳嗽の大部分は上気道炎とそれに続発する咳嗽であり,ほとんどが自然軽快するが5),3週以内の咳嗽で受診した場合でも慢性咳嗽の発症早期をみている可能性があるので,慢性咳嗽の原因疾患を鑑別診断に含める必要がある.
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