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Case 患者はそう言うけれども…(入院中はインスリン治療を行い,経口血糖降下薬で退院した2型糖尿病患者の例)
患者:70歳女性,主婦.
家族歴:特記すべきことなし.
既往歴:高血圧で内服中.
現病歴:5年ほど前から,循環器内科で高血圧に対してサイアザイド系利尿薬を処方されていた.たまたま測った血糖値が454mg/dLと非常に高値であったため,内分泌内科に紹介となり,血糖コントロールと初回教育目的で入院となった.この半年で体重が10kg減少し,口渇も感じていたという.
身体所見:156cm,47kg(BMI 19.3).下肢腱反射正常,網膜症なし.
検査所見:蛋白尿なし,空腹時血糖 230mg/dL,HbA1C 15.1%,尿中CPR 40.3mg/gCr,抗GAD抗体陰性.
経過:入院後は,R-R-R-Nのインスリン4回注射を開始し,10日後からは混合型(30R)2回注射とした.この頃には,血糖値は,食前100~150,食後150~200mg/dLとまずまずのコントロールになった.われわれは,退院後もインスリン治療を続けていこうと考えていたが,患者は注射は面倒だし,生活が制限されて日々の活動がやりにくくなるので経口薬のほうがよいと主張した.何度も話し合いをしたが,患者の意志は強く,最終的には彼女の考えを尊重し,インスリンは打たず,経口剤(ダオニール7.5mg/日)で様子を見ることで退院となった.ただし,もし外来で糖尿病のコントロールがうまくいかなくなったときには,インスリン注射を再開するという約束をした.退院時の空腹時血糖値は127mg/dL,朝食後2時間値は194mg/dLであった.
われわれは,正直なところ経口薬だけで血糖コントロールをするのは難しいだろうと考えていた.遅かれ早かれインスリン注射が必要となると予測していた.しかし,われわれの予想に反して,退院後もHbA1Cは順調に低下し,経口薬を次第に減量しながら,1年以上に渡り6%未満の数字を保っている.
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