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プロローグ
本誌54巻7号(2019年)の主題は「A型胃炎—最新の知見」であり,その後4年間の本疾患の早期の画像診断を中心とした病態解明が本特集号の骨子である.
本邦の自己免疫性胃炎(autoimmune gastritis ; AIG)の研究は,診断基準の確立とともに一気に進んだ.さらに,初期像を捉えることができれば,完成したAIGになるまでにどれくらいの時間がかかるか,また,H. pylori(Helicobacter pylori)陽性のAIGはH. pylori除菌により進展するのか,あるいは改善するのかを検討することができる.特に,筆者の恩師の一人である三好秋馬先生の研究テーマの一つがAIGで,本誌2巻10号(1967年)に総説論文として「慢性胃炎,とくに萎縮性変化の発生機転,主として免疫の立場から」1)を寄稿しておられる.その論文の中では,血中抗胃抗体の頻度について,悪性貧血や橋本病などの自己免疫疾患をはじめとして慢性胃炎,消化性潰瘍,胃癌のさまざまな疾患で検討し〔ここで胃抗体としたのは,各疾患での陽性率が高いので真の抗胃壁細胞抗体(anti-parietal cell antibody ; APCA)であるかが不明のため〕,さらに,イヌでのAIG試作実験を行い,胃粘膜の傷害が胃自己抗体を産生し,胃粘膜萎縮に進展していくことを想定した.本誌は現在では消化管の診断学の流れから画像診断が中心の雑誌になっているが,なんとこのような機能面から胃疾患を検討した総説論文も以前は掲載されていた.三好先生は胃炎の発生機序として自己免疫機序を考えていたが,何分,AIGを発生母地とする悪性貧血(pernicious anemia ; PA)は本邦ではまれな疾患のため,胃炎の発症機序としては興味があったが,AIGそのものは注目を浴びることはなかった.何と50年の時を経て,そのAIGが再び本誌の主題となった.
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