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de novoはラテン語のdē novōに由来し,“初めから,新たに”を意味する.腫瘍病理学においては,前駆病変を経ることなく正常組織から癌腫が直接発生する事象を“de novo発癌”,発生した癌腫を“de novo癌”と表現する.分子細胞生物学分野,臨床遺伝学分野などでは異なる意味合いで用いられることがあるので注意が必要である.腺腫や異形成といった前駆病変を経る多段階的発癌は“de novo発癌”の対義にあたる.“de novo癌”は,消化管領域では大腸癌で使われることが多い.これは腺腫由来癌(adenoma-carcinoma sequenceによる癌)が多いとされる大腸癌組織発生において,非腫瘍大腸粘膜から直接発生した癌を腺腫由来の癌と区別するため“de novo癌”と呼ぶようになったとの説明がある1).腺腫由来の癌が少ない胃癌では,あえてde novo癌という表現は用いられない.病理組織学的なde novo癌は,中村1)により,「病変が組織学的に癌のみから成る病変を“de novo癌”と呼び,一つの病変が組織学的に腺腫と癌組織とから成り立っている病変を,それらの組織量の割合とは無関係に,腺腫の癌化による“腺腫由来癌”と呼ぶ」と定義されている.ただし,病変が癌成分のみから構成される場合,真のde novo癌と,腺腫などの前駆病変が癌の進展により消失したものが含まれる可能性があり,厳密な意味で真のde novo癌を病理学的に抽出することは難しい.そのため,発生時の状態により近いと考えられる小型の早期癌,特に陥凹型病変が,de novo癌として提示されることが多い(Fig.1).
病理診断基準の違いもde novo癌の診断に影響を与える.大腸腫瘍の病理診断,特に癌と腺腫の鑑別については,本邦においては構造異型と細胞異型に基づき,異型度が高い病変を癌と診断するのに対し,欧米を中心とする海外では間質浸潤所見を癌の診断根拠としている.したがって,粘膜内病変においては本邦で癌と診断されるものが海外では高度異形成,あるいは高度異型腺腫と診断される傾向にある2).粘膜内成分を腺腫とみなすか,癌とみなすかによって,腺腫由来癌か,de novo癌かが変わることから,de novo癌の真の頻度はいまだ明らかとは言えない.
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