Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
KRAS遺伝子はHRASやNRAS遺伝子と同じく低分子量GTP結合蛋白質のRASファミリーに属する.BRAF遺伝子はRAFファミリーに属するセリン/スレオニンキナーゼをコードし,GNAS遺伝子はGTP結合蛋白質のαサブユニットをコードする.BRAF,KRASおよびGNAS遺伝子はいずれも癌遺伝子であり,その変異は機能獲得型で下流シグナルを活性化することにより腫瘍発生を促進する.
KRAS,BRAF遺伝子変異は大腸癌の発生過程と関連が深い(Fig.1).大腸癌の主要な発癌経路として,APC遺伝子変異により発生する低異型度腺腫が起点となり,KRAS,TP53遺伝子変異,CIN(chromosomal instability)が段階的に蓄積されるadenoma-carcinoma sequenceと,BRAF遺伝子変異,ゲノムワイドな異常メチル化,CIMP(CpG island methylator phenotype)獲得,MLH1遺伝子異常メチル化による散発性マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability ; MSI)により発癌するserrated neoplastic pathwayが知られている.前者の経路により発生する大腸癌はMSS(microsatellite stable)/CIN大腸癌,後者の経路により発生するものはMSI大腸癌と呼ばれる.さらに近年,serrated neoplastic pathwayは,TSA(traditional serrated adenoma)を介したtraditional serrated pathwayと,SSL(sessile serrated lesion)を介したsessile serrated pathwayに大別されることが判明した.traditional serrated pathwayは,BRAF serrated pathwayとKRAS serrated pathwayが存在し,いずれもTP53遺伝子変異とWnt/β-catenin経路活性化が関与し,MSS大腸癌へと進展する.一方,sessile serrated pathwayは初期段階でBRAF遺伝子変異を獲得し,CIMP-high,MLH1メチル化,Wnt/β-catenin経路活性化を経てMSI大腸癌に至る経路と,TP53遺伝子変異が関与しMSS大腸癌に至る経路がある1).SSLの一部はTSAを介してBRAF変異陽性のMSS型大腸癌へと進展する可能性が示唆されている.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.