Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
はじめに
食道上皮内腫瘍(intraepithelial neoplasia)あるいは異形成(dysplasia)に関して,本誌では第26巻2号(1991年)「食道“dysplasia”の存在を問う」1),31巻6号(1996年)「食道dysplasia—経過観察例の検討」2),42巻2号(2007年)「食道扁平上皮dysplasia—診断と取り扱いをめぐって」3)の3回にわたり特集が組まれ,代表的な症例を提示するとともに,定義,病理診断,臨床的な対応など多角的に議論されてきた.上皮内腫瘍は当初,“異形成”という用語が用いられ異型を示す非腫瘍性病変も含まれていたが,WHO分類第3版(2000年)4)から“上皮内腫瘍”の用語が使用されるようになり,本邦の「食道癌取扱い規約 第10版」5)でも異形成から上皮内腫瘍に用語が変更され,腫瘍性病変のみを取り扱うという認識に至った.このように,この約30年の間に異形成(dysplasia)から上皮内腫瘍(intraepithelial neoplasia)へ,非腫瘍性病変を含む異型上皮から腫瘍性病変へと,用語および定義の変遷がみられた.
本誌42巻2号(2007年)「食道扁平上皮dysplasia—診断と取り扱いをめぐって」3)が発行された時期は,上皮内腫瘍の用語が「食道癌取扱い規約 第10版」5)に採用された時期に一致する.それから約15年が経過したが,その間に食道癌取扱い規約は1回改訂され,同じ上皮内腫瘍の用語を採用しているものの定義が変更となった6).現在用いられている“扁平上皮内腫瘍”は上皮内癌を含まず6),「食道癌取扱い規約 第10版」5)あるいはWHO分類第5版7)のlow-grade intraepithelial neoplasia/dysplasiaにほぼ相当する病変である.今回,現行の定義のもとで初めて食道扁平上皮内腫瘍を見直す機会となった.
今回の検討では食道専門の内視鏡医が症例を収集し,その病理組織標本のバーチャルスライド12例13病変を消化管専門の病理医9名に事前配付し,診断名を回収し解析した.その中から代表的な6例については,内視鏡医と病理医でさらに討論した.本稿では,今回検討した13病変の概要を記すとともに,この病変がどのように診断されているか,病理医間でどのような違いがあるかについて述べる.さらに,解釈や判定に個人差がどのような要因で生じるかを整理してみたい.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.