Japanese
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今月の主題 早期大腸癌内視鏡治療の新展開
序説
早期大腸癌内視鏡治療の課題と将来展望
Introduction
田中 信治
1
Shinji Tanaka
1
1広島大学大学院医系科学研究科内視鏡医学
キーワード:
早期大腸癌
,
内視鏡治療
,
T1癌
,
リンパ節転移
,
術前診断
Keyword:
早期大腸癌
,
内視鏡治療
,
T1癌
,
リンパ節転移
,
術前診断
pp.1009-1012
発行日 2021年7月25日
Published Date 2021/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403202500
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内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)の普及により,早期大腸癌においても大きさにかかわらず完全一括切除することが可能となってきた.一般的に,粘膜内にとどまる早期大腸癌(Tis癌)は転移することはなく局所切除のみで根治が可能であるが,T1癌は約10%にリンパ節転移を認めるため,内視鏡的切除後の病理組織学的検索で根治度判定を行い,追加腸切除の適応を検討する必要がある1).「大腸癌治療ガイドライン2019」1)におけるpT1(SM)癌の治療方針はFig.1 1)のごとくである.これに基づいて,早期大腸癌の取り扱い指針はFig.2 1)のように記載されている1).なお,“追加治療としてリンパ節郭清を伴う腸切除を考慮する”という文章は,外科的切除をすべきという意味ではなく,あくまで考慮・検討するという意味で,種々のリンパ節転移危険因子の組み合わせから予測される具体的な転移リスク(%)からみた根治性と患者背景〔本人の意志,年齢,身体的活動度,合併症,術後のQOL(quality of life)など〕を総合的に比較評価し,十分なインフォームド・コンセントを得たうえで慎重に追加手術の適応を判断すべきという主旨である(Fig.3).
これまで,T1b癌は内視鏡的切除の適応とされていなかったが,近年の症例集積と新たなエビデンスの構築によりT1b癌におけるリンパ節転移リスクを層別化しうることが示され,T1b癌に対する内視鏡的完全切除生検の意義が議論されている2)〜5).
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