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概念・定義,腫瘍発生
胃癌の組織型は本邦では分化型と未分化型に大別され1)2),欧米ではintestinal typeとdiffuse typeに分類される3).分化型と未分化型の区別は,腺管を形成している癌は分化型,腺管形成の乏しいものは未分化型とされ,腫瘍発生部位について分化型は腸上皮化生粘膜からの発生,未分化型は粘膜固有層腺頸部増殖帯からの発生とされている2).しかしながら前者については腸上皮化生腺管から直接癌腺管が出芽している所見を観察した報告はない.病理組織学的に分化型には管状腺癌(tubular adenocarcinoma ; tub),乳頭状腺癌(papillary adenocarcinoma ; pap)が,未分化型には低分化腺癌(poorly differentiated adenocarcinoma ; por),印環細胞癌(signet-ring cell carcinoma ; sig),粘液癌(mucinous adenocarcinoma ; muc)が含まれる1).未分化型癌のうち印環細胞癌は病理組織学的に癌細胞内に粘液を貯留する印環型の細胞から成る腺癌を言う.腺腔形成はみられず,細胞内粘液が豊富で核が細胞辺縁に圧排される病理組織像が典型的とされる2).印環細胞癌の予後について早期癌の段階では非印環細胞癌に比して差異はないが,進行癌では予後不良を示すという報告がある4).予後不良の要因として印環細胞癌は早期癌の段階では表面平坦もしくは陥凹型の肉眼型を取ることが多く,病変の認識が困難なことがあるため,早期発見が遅れることが指摘されている2).進行するとスキルス胃癌となって発見される例が多く,その場合,リンパ節転移,腹膜播種,癌性リンパ管症,Krukenberg腫瘍などにより予後不良を示すとされる5)6).
その分子学的な発生機序としては,若年発症で多発する印環細胞癌が家族内集積を認める遺伝性びまん性胃癌(hereditary diffuse gastric cancer ; HDGC)ではCDH1遺伝子のgermline変異によるE-cadherin機能不全に起因するとされている7).一方で散発性印環細胞癌ではE-cadherinプロモーター領域の高メチル化は認めるが,APC,TP53遺伝子などの癌関連遺伝子変異やmicrosatellite領域の異常,染色体アレル不均衡(allelic imbalance ; AI)はまれとされている8).最近ではRhoA遺伝子変異も特徴的とされている9).
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