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これまで「胃と腸」誌に記載した論文はいずれも気合を入れて記載した.そのため,「私の一論文」というのはあるが,「私の一冊」を推挙するのは,困難であった.
そんなある日の「胃と腸」編集委員会で,医学書院の担当編集者から8月に発売する「胃と腸」誌の販売実績がほかの月より少ないとおうかがいした.編集委員会で「暑い夏に冷房が効いた部屋で読者が手に取り気楽に読むことができる主題を考えてみてはどうか」と言う意見が出た.私は,骨のある論文にも執着があった.しかし,同時に,長年困っていることがあった.それは,消化管画像診断の症例検討の研究会(例えば,早期胃癌研究会など)の際,私はしばしば座長を務めることがある.私は必ず,他施設から提示する予定の症例についてプレゼンテーションに用いるスライドを取り寄せて過不足や内容のチェックを行っている.その際,消化管画像診断のためのプレゼンテーションのために,この項目が不足しているなど,内容ではなく,形式を訂正するのに時間や労力を費やしうんざりしていたところであった.そこで,「消化管画像をプレゼンテーションするために,どの項目が必要で,なぜそれが必要かを示した主題を臓器ごとに記載した号は,従来の『胃と腸』とは異なるが,読者のためになるのではないか」と提案した.即座に編集委員の一人である小野裕之先生が賛成してくれたことを覚えている.従来の「胃と腸」と異なった企画であり,チャレンジであった.出版後,8月のジンクスを破り,ほかの号に負けない販売数となり,しかも時が経っても,継続して購入され続けている.消化管画像プレゼンテーションを作成する場合,この号に記載した論文に準じてくれるように依頼すればよくなり,私たちも助かり,もちろん,購入した読者にも役に立つことを今は実感している.
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