私の一冊
1998年第33巻9号「潰瘍性大腸炎:最近の話題」
松本 主之
1
1岩手医科大学医学部内科学講座消化器内科消化管分野
pp.233
発行日 2019年2月25日
Published Date 2019/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403201585
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
「胃と腸」誌は,消化管癌の中でも早期癌の形態診断の追求をメインテーマとして刊行された医学雑誌です.なかでも1990年代は陥凹型早期大腸癌の診断が最も注目された話題の一つでした.一方,この時期から本邦の潰瘍性大腸炎患者数が急増し,本症における内視鏡所見の詳細な解析もが「胃と腸」誌に取り上げられるようになりました.本号は,そのような状況において発行された大変ユニークな号となっています.当時,潰瘍性大腸炎は直腸から連続性に罹患する慢性炎症性疾患と信じられていましたが,本号では当時本症患者で高率に非連続性の虫垂開口部病変が認められることが示されました.その事実は,内視鏡所見のみならず大腸切除標本の検討からも明らかとなりました.
一方,本号では潰瘍性大腸炎が区域性病変,縦走潰瘍,あるいは敷石様所見を伴うことも示され,Crohn病との鑑別が困難な症例が存在することも論じられています.さらに,サイトメガロウイルス感染を合併した症例,アフタ様病変から典型像へと進展した症例など,現在の炎症性腸疾患診療でも念頭に置くべき病態が示されています.また,拡大内視鏡観察下の重症度評価に有用な内視鏡像が網羅的に示されています.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.