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潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)は,主として粘膜を侵し,しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症と定義されている1).その診断は,持続性または反復性の粘血・血便という臨床症状と,大腸内視鏡所見,生検所見あるいは注腸X線所見を組み合わせることによってなされている.その際,直腸から口側結腸に連続して病変が存在することを肉眼的かつ組織学的に確認することが重要とされてきた.すなわち,びまん性かつ連続性の病変分布は,Crohn病や感染性大腸炎などの他疾患との鑑別において極めて重要な所見の1つと考えられてきた.ところが,最近,直腸炎型や左側大腸炎型の症例で全大腸内視鏡検査を施行すると,高率に虫垂病変が発見されることが報告されている2)~4).この発見は,本症の疾患概念に一部修正を加えるインパクトの大きいものと考えられる.
UCにおける虫垂病変の検索は,これまで主として切除標本を用いてなされてきた.したがって,全大腸炎型の重症例が検索対象となることが多く,虫垂病変の大部分は盲腸に連続した病変として認識されていた.しかし,最近の全大腸内視鏡検査を用いた検討では,虫垂の非連続性病変の発見頻度は,12~75%とかなり高率であることが報告されている2)~4).以前からUCの診断上,大腸内視鏡検査が必須とされてきたにもかかわらず,非連続性の虫垂病変がつい最近までほとんど報告されなかったのはなぜであろうか.第1に,従来は,本症の大部分が直腸に連続した病変を有するという固定観念にとらわれ,病変境界部までの内視鏡観察ができた段階で検査を終了することが多かったためと考えられる.次に,近年の内視鏡挿入技術の進歩と腸管洗浄液による前処置の普及によって深部大腸の観察が容易かつ緻密になったこともその理由として挙げられる.
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