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胃がんに対する化学療法の流れと実践を網羅
近年,化学療法は目覚ましく進歩しつつあるが,切除不能・再発胃癌に対して化学療法だけで治癒を得ることは難しい.そのため,緩和的化学療法の目的は,「できるだけ普段に近い時間を,少しでも延ばす」ことであるともいえる.この「普段に近い時間」という意味において入院か外来かの違いは大きく,がん診療にかかわる多くの医療機関において外来治療センターが整備され,専門のスタッフが配置されている.ただし,外来治療によって医療の質や安全性が低下することは許されず,医療スタッフの目が届かない自宅でのセルフケアができるようにするための患者教育や緊急対応などのチーム医療が重要であることはいうまでもない.これまでも「いかに外来治療の質や安全性を確保するか」について多くの提案がなされてきたが,その実践のために患者1人にかけなければいけない時間が増える一方である.しかし,各医療機関のスタッフ数や場所や時間には限界があり,今後は「いかに質を落とさずに業務を効率化するか」についても今後検討されなければならないことは間違いない.さらには,医療には「これでいい」などの妥協による終点はなく,外来治療も進歩し続けなければならない.そのため,「明日の目標」について考え,新たな業務を実践するためには,余裕を持つことが必須であり,そのためには現在の業務を効率化することを最初に考えなければならない.
本書『これだけは知っておきたい 胃がん外来化学療法へのアプローチ』は,胃癌の疫学から始まり,切除不能・再発胃癌だけでなく術前術後の化学療法が整理され,それぞれの現時点における標準的な化学療法レジメンだけでなく,現在第III相比較試験が行われている新規薬剤についてまで説明されている.さらには,外来化学療法について,患者からの視点から見た注意点や対応方法や緩和医療,代替療法まで言及されている.このように本書は網羅的ではあるが,それぞれの項目において「これだけは知っておきたい」重要なエッセンスがしっかりまとめられており,一読するだけで胃癌に対する化学療法の流れと実践を知ることができると思われる.
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