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書評「X線診断へのアプローチ[4]消化管」
牛尾 恭輔
1
1国立がんセンター放射線診断部
pp.247
発行日 1990年2月25日
Published Date 1990/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110398
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この本を読んでさすが狩谷先生だ,私の尊敬する先生の人柄が偲ばれる,オーソドックスな魂の入った単行本だなあと思った.写真や言葉の羅列では決してない.写真には精巧なシェーマがつけられ,若い医師,これから消化管診断を専攻しようとする医学者に形態学の真髄を伝え,残したいという願いがひしひしと伝わってくる.また随所にみられる的確で親切な解読,ノートでは,少なくともこれだけは知識として持っていてほしいという願いが込められている.特に消化管の変形の解析から疾患を考え診断するという変形の診断学の精神が,全消化管に脈打っている.
表紙は本の顔である.そこにはまず胃疾患(線状潰瘍,Ⅱc型早期癌,スキルス,悪性リンパ腫)を上下と両端に分けて,その間に食道癌,潰瘍性大腸炎,大腸ポリープが載せられている.中をみると,胃を基本としつつ消化管全体の形態診断学について,解剖から始まり撮影法が述べられている.疾患の種類も多い.73症例もの多くの病変が提示され,病変を美麗に描出するにはどうすればよいかを,写真を通して読者に訴えている.病変を形づくる像や線の解読のみならず,病変の周囲にみられる正常の所見についても,細心の心配りがなされている.だから教育,診療の場,カンファレンスなどですぐに役立つ実践の書である.聞くところによると,狩谷先生は本書の校正刷を御覧になる前に亡くなられたと聞く.だが先生の遺志をくんで間山先生が御尽力のうえ立派にまとめられている.見事である.
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