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はじめに 本誌増刊号のテーマとして炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ; IBD)が取り上げられるのは,1997年以来である.その間,IBDでは基礎研究のみならず,診断と治療の面でも驚くべき進歩がみられた.すなわち,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)やCrohn病(Crohn's disease ; CD)の遺伝的要因,環境因子,あるいは粘膜免疫調節機構の解析が進み,新しい治療の道が開かれた.また,診断面では小腸内視鏡の普及により,小腸病変の特徴が明らかとなった.さらに,白血球除去療法,免疫調節薬,抗TNF-α療法などの新規治療法の有効性も明らかとなり,治療選択肢が拡がったことも周知されている.一方,IBDの診療においては,従来から積み重ねられてきたX線・内視鏡所見や病理所見の特徴を理解しておくべきことは言うまでもない.従来の診断学の成果と最近の進歩が本号では取り上げられ,網羅的に提示される.
近年,IBD患者数の増加は顕著であり,疫学上の特徴と,今後の展望についても知識が必要である.本邦のIBD疫学は充実している.その理由は,厚生労働省の疫学調査と診療上の診療費援助制度のためである.軽症例まで広く援助の恩恵にあずかっているため,症例数の増加はさらに拍車がかかっている.しかし,IBDが難治性疾患であることもあり,紹介を受ける専門施設の数は十分とは言えず,診療は大変混雑している.さらに,IBD専門施設でない施設でも,IBD患者の診療に当たることが増えている.そのIBD診療手順はガイドライン1)~3)などに学べるが,軽症や中等症の治療が成功しない場合には専門施設での診療が必要となる.すなわち,専門的知識が必要な生物学的製剤や免疫抑制剤は時に強い副作用があるため専門医との相談ののちに導入することが望ましい.
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