特集 図説 胃と腸用語集2012
疾患〔胃〕
急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion;AGML)
佐藤 公
1
1山梨大学第一内科
キーワード:
急性胃病変
Keyword:
急性胃病変
pp.753
発行日 2012年5月24日
Published Date 2012/5/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113334
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急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion ;AGML)という概念を初めて提唱したのはKatzら1)であり,1965年にacute erosive gastritis,acute gastric ulcer,hemorrhagic gastritisの3つの病態に分類し報告した.日本においては,1973年に川井ら2)が“急性に発症し,内視鏡あるいはX線で所見がみられる”病態の包括的な概念,すなわち一種の症候群として急性胃病変(acute gastric lesion,AGL)を提唱した.しばらくはこの両者が使われ,また,いずれの用語を用いるかの議論がなされた時代もあったが,“急性胃粘膜病変”という用語が,病変の存在する深さを表すものではなく“粘膜面に存在する病変”という意味で用いられる場合には,両者に違いはないことを川井らのグループも指摘している.並木ら3)は,急性胃粘膜病変の診断基準を“突発する上腹部痛,吐き気,嘔吐,時に吐血・下血の症状を伴って発症し,この際早期に内視鏡で観察すると,多くの場合,胃粘膜面に急性の異常所見,すなわち明らかな炎症性変化,出血,潰瘍性変化(びらん,潰瘍)が観察されるもの”と定義している.
これらの疾患概念が生まれた時代背景には,診断技術の目覚ましい進歩があったことが挙げられる.急性期に積極的に緊急内視鏡検査が行われるようになり,様々な内視鏡所見が確認されるようになった.得られた所見を病因論的にではなく,症候論的,あるいは治療論的立場からまとめられた臨床的概念といえる.
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